大判例

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鹿児島地方裁判所名瀬支部 事件番号不詳 判決

主文

被告人田畑憲一及び同保村文彦を各懲役六月に、同福田一夫を懲役四月に各処する。

但し、被告人三名に対し一裁判確定の日から孰れも壱年間右各刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人等の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人田畑憲一は昭和二十七年十二月以降同二十八年十二月奄美群島の日本復帰に至るまでは琉球政府大島中央病院の、右復帰後同二十九年五月迄は鹿児島県立大島病院の病院長として同病院の院務一切を統括主宰し且同病院歳出歳入認証官の職にあつたもの、被告人保村文彦は同二十八年六月以降同二十九年五月迄同病院事務長として被告人田畑を補佐し院務を監督遂行し且つ同病院の支出行為担当官の職にあつたもの、被告人福田一夫は昭和二十八年六月以降同病院の経理係主任として歳出歳入金の出納並びに保管の業務に従事していたものであるが、琉球政府治下同病院が施療して患者より徴収した金員は同政府の歳入金として納入すべくこれを自由に歳出金として使用することはできないのが立前であつたが、同政府の予算措置は常に渋滞し殊に同二十八年八月奄美群島の日本復帰を予告した所謂るダレス声明以後は歳出金を制限し予算の令達も相当遅延した為同病院の運営に支障を来し、やむなく歳入金を納入せずにそのまま歳出に廻して支出流用し、その後の予算の令達配布を俟つて帳簿上の整理をする慣行により会計事務を運営していたところ、日本復帰を目前に控え琉球政府公務員の往来あり、又本土病院の視察や復帰に備えての諸対策上の連絡等の為、病院長が本土に旅行する必要に迫られたものの、同病院の歳出予算には交際費接待費等の計上なく、又右本土出張も琉球政府の許可するところとならなかつたので、これら諸費用の捻出に苦慮した挙句、同年十月末頃被告人三名共謀の上、前示政府への歳入納付金中から雑費として支出せんことを決意し、同年十一月における被告人田畑憲一の日本本土旅行費に要した弐万円(B号軍票券表示額)、同年八月以降十二月迄五回に亘る琉球政府職員の歓送迎宴会費並びに年末における同病院職員の忘年会費等に要した合計金六千六百八十五円(前同断)を、同年十月中旬頃以降前示復帰直前に至る間に同病院が患者大江トミ外数百名からレントゲン撮影料として徴収し、被告人福田一夫において業務上保管中の、琉球政府に歳入金として納付すべき金員中から支出充当し、前記金員合計弐万六千六百八十五円(前同断)相当額はこれを琉球政府歳入金として所定の手続により納入せず、以て横領したものである。

(証拠の標目)(省略)

(法律の適用)

被告人福田一夫の判示所為は刑法第二百五十三条、第六十条に、爾余の被告人等の判示所為は夫々右各法条の外同法第六十五条第一項、に各該当するので、被告人福田一夫に対しては右同法第二百五十三条の、被告人田畑憲一、同保村文彦は孰れもその身分がないので同法第六十五条第二項により同法第二百五十二条第一項の、各所定刑期範囲内で、被告人等を夫々主文第一項掲記の刑に処し、但し被告人三名に対し諸般の情状を考慮し、同法第二十五条を各適用して、本裁判確定の日から孰れも壱年間、右刑の執行を猶予すべく、訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項本文、第百八十二条に従い被告人三名の連帯負担とする。

それで主文の通り判決する。(昭和三〇年八月一六日鹿児島地方裁判所名瀬支部)

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